不動産の米国株 — 日本企業から見る対応表
当サイトが載せている22業界で、◎(正面から重なる)が1件も無い唯一の業界です。日本の2社は開発から賃貸・分譲・管理までを手がける総合デベロッパー、米国の3社はいずれも1つの資産に絞って貸すREITで、事業の形が根本から違います。
売上高も日本側のほうが大きいです。三井不動産の2兆7,097億円は、米国3社のいずれよりも大きく、最大のアメリカン・タワー(約1兆6,926億円)の1.6倍です。三井不動産は分譲(物件の販売)が外部売上の26.9%を占め、米国3社にはこれに当たる事業がありません。
部門の利益の定義も5社で5通りです。とくに米国のプロロジスとアメリカン・タワーは、減価償却費を差し引く前の金額を部門の利益にしているため、利益率が40%〜80%と高く出ます。
このページでは、事業の形・部門の分け方・部門の利益の定義・財務の形という4つの軸で並べています。
この業界の日本の顔ぶれ
三井不動産
賃貸(外部売上の34.6%)・分譲(26.9%)・マネジメント(18.9%)・その他(10.6%)・施設営業(9.0%)の5部門。部門の利益は「事業利益」で、営業利益に持分法投資損益と固定資産売却損益を加えたもの。売上高2兆7,097億円は日米5社で最大。2025年3月期に株式分割。直近の四半期は売上高23.1%減・純利益39.0%減。
売上の内訳(2026年3月期)
| 区分 | 構成比 |
|---|---|
| 賃貸 | 34.6% |
| 分譲 | 26.9% |
| マネジメント | 18.9% |
| 報告セグメント以外(差額) | 10.6% |
| 施設営業 | 9.0% |
有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上高を取得しています。構成比は連結の売上高に占める割合です。★最後の行は当サイトが連結の売上高から報告セグメントの合計を引いて求めたものです。会社が「その他」として開示している区分にあたり、有価証券報告書のXBRLには区分としてのタグが付いていません。
くわしく三井不動産の決算と長期経営方針
三菱地所
コマーシャル不動産(34.9%)・住宅(25.8%)・丸の内(21.6%)・海外(11.4%)・設計監理不動産サービス(4.3%)・投資マネジメント(2.0%)の6部門。丸の内という地区を部門として開示しているのは掲載121社でこの会社だけ。部門の利益は営業利益ベース。直近の四半期は純利益198.3%増。
売上の内訳(2026年3月期)
| 区分 | 構成比 |
|---|---|
| コマーシャル不動産事業 | 34.9% |
| 住宅事業 | 25.8% |
| 丸の内事業 | 21.6% |
| 海外事業 | 11.4% |
| 設計監理・不動産サービス事業 | 4.3% |
| 投資マネジメント事業 | 2.0% |
有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上高を取得しています。構成比は連結の売上高に占める割合です。
くわしく三菱地所の決算と長期経営計画
アメリカの対応企業
アメリカン・タワーAMT
American Tower Corporation
通信塔の事業を4地域に分け、データセンターとサービスを加えた6部門。米国・カナダが売上の49.3%。データセンターは売上の9.9%だが設備投資では38.7%を占める。株主資本比率5.8%は日米5社で最も低く、ROEは71.9%と出る。通期の見通しをGAAPの金額で示している唯一の米国企業。
- 売上高1.7兆円FY2025 · 米国基準
- 掲載企業内シェア41.3%
- 時価総額13.0兆円
- 三井不動産
- 三菱地所
プロロジスPLD
Prologis, Inc.
物流施設の賃貸と開発が売上の93.3%。もう1つの部門は共同投資ファンドの運用。地域別は米国91.0%。株主資本比率53.9%は日米5社で最も高い。部門の利益は一般管理費と減価償却費を引く前の金額。1株当たり配当金は5期続けて増配。2026年に英国SEGRO plcへの買収提案の可能性を開示している。
- 売上高1.4兆円FY2025 · 米国基準
- 掲載企業内シェア34.1%
- 時価総額21.0兆円
- 三井不動産
- 三菱地所
サイモン・プロパティー・グループSPG
Simon Property Group, Inc.
報告セグメントが単一で、会社は「不動産事業が連結総資産の96%」と記載。地域別は割合だけの開示(米国外が総収入の5.3%)。2025年12月期の当期純利益46億24百万ドルには、TRGの支配獲得に伴う非現金の評価益28億58百万ドルが含まれる。1株当たり配当金8.55ドルは日米5社で最も高い。
- 売上高1.0兆円FY2025 · 米国基準
- 掲載企業内シェア24.7%
- 時価総額11.2兆円
- 三井不動産
- 三菱地所
カードの下にある「対応する日本企業」は、その米国企業と事業が重なる会社です。日米それぞれの開示資料(年次報告書・有価証券報告書)でセグメントを突き合わせ、重なりを確認できたものだけを載せています。どこがどう重なるかは下の「日米の構造の違い」で説明しています。
規模の比較
日本企業(オレンジ)と米国企業(青)を同じ物差しで並べています。米ドルは基準日のレートで円換算しました。会計基準が異なるため、売上高の範囲は完全には一致しません(各社の基準を併記しています)。上のカードの「掲載企業内シェア」は、掲載した米国企業3社の売上高合計に占める割合です。世界市場でのシェアではありません。
日米の構造の違い
対応関係に◎が1件も無い
★★★当サイトが載せている22業界で、◎(正面から重なる)が1件も無いのはこの業界だけです。
★★日本の2社は「開発して、貸して、売って、管理する」総合デベロッパーです。三井不動産は賃貸・分譲・マネジメント・施設営業の4本柱、三菱地所はコマーシャル不動産・住宅・丸の内・海外・設計監理不動産サービス・投資マネジメントの6部門を持ちます。
★★★米国の3社はいずれも1つの資産に絞って貸すREITです。プロロジスは物流施設、サイモン・プロパティー・グループはモール、アメリカン・タワーは通信塔とデータセンターです。分譲(物件の販売)に当たる事業を3社とも持っていません。
★★三井不動産の分譲は外部売上の26.9%(7,292億71百万円)で、部門の事業利益1,931億82百万円は賃貸の1,770億11百万円を上回ります。この部分に対応する米国企業がありません。
★そのためこのページの対応関係は○が4件、△が2件です。
売上高は日本側のほうが大きい
★★★当サイトが載せている業界で、日本企業が売上高の上位2つを占めるのは不動産だけです。
- ★三井不動産 … 2兆7,097億47百万円
- ★三菱地所 … 1兆7,461億48百万円
- ★アメリカン・タワー … 106億45百万ドル(約1兆6,926億円)
- ★プロロジス … 87億90百万ドル(約1兆3,977億円)
- ★サイモン・プロパティー・グループ … 63億64百万ドル(約1兆120億円)
★★日本の2社は分譲や請負の売上を含みます。三井不動産の分譲7,292億71百万円とその他(新築請負事業等)2,882億57百万円、三菱地所の住宅事業4,505億57百万円がこれにあたります。
★★★米国3社の売上はほぼ賃料です。サイモン・プロパティー・グループは賃料収入が売上の91.7%、プロロジスは物流施設の賃貸と開発が93.3%です(いずれも当サイトの計算)。
★米ドルはページ下部に記載の基準日のレートで円換算しています。
部門の利益の定義が5社で5通り
★★★同じ「部門の利益」でも、中身が5通りあります。
- ★三井不動産 … 事業利益。営業利益+持分法投資損益(不動産分譲を目的とした関係会社株式売却損益含む)+固定資産売却損益
- ★三菱地所 … 営業利益ベースの数値
- ★★プロロジス … 部門の営業利益(Reportable Segment Net Operating Income)。一般管理費と減価償却費を引く前
- ★★アメリカン・タワー … 部門の営業利益。株式報酬費用・本社の販売管理費・減価償却費・その他の費用を引く前
- ★★★サイモン・プロパティー・グループ … 報告セグメントが単一なので部門の利益が無い
★★★プロロジスとアメリカン・タワーの部門の利益率が40%〜80%と高く出るのは、減価償却費を引く前の金額だからです。プロロジスの不動産事業は75.5%、アメリカン・タワーの米国・カナダは80.3%です(いずれも当サイトの計算)。日本の2社の部門の利益率とそのまま比べることはできません。
★★三井不動産の「事業利益」も、営業利益とは別のものです。2026年3月期は営業利益3,977億88百万円に対して事業利益4,451億20百万円で、差の473億32百万円は持分法投資損益と固定資産売却損益です。
財務の形が5社で大きく違う
★★★株主資本比率(自己資本比率)は5.8%から53.9%まで開いています。
- ★プロロジス … 53.9%
- ★三井不動産 … 32.4%
- ★三菱地所 … 31.4%
- ★サイモン・プロパティー・グループ … 12.8%
- ★アメリカン・タワー … 5.8%
★★★アメリカン・タワーとサイモン・プロパティー・グループはROEが65%〜114%と出ます。分母の株主資本が小さいためで、収益力の高さをそのまま表す数字ではありません。当サイトは会社の数値から計算したROEをそのまま載せていますが、この2社については分母の小ささを合わせて読む必要があります。
★★日本の2社は31%〜32%でそろっています。三井不動産は5期で34.1%から32.4%へ、三菱地所は30.8%から31.4%へと、どちらも大きくは動いていません。
通期の見通しの出し方が3通りある
★★★5社で3通りに分かれます。
- ★金額で全項目 … 三井不動産・三菱地所。「今期の見通し」の節を出す
- ★★GAAPの金額(売上高・当期純利益) … アメリカン・タワー。節を出す
- ★★★GAAPの1株当たりの範囲だけ … プロロジス・サイモン・プロパティー・グループ。節ごと落とす
★★プロロジスは普通株主に帰属する当期純利益を1株当たり4.40〜4.55ドル、サイモン・プロパティー・グループは6.47〜7.47ドルと示していますが、売上高や利益の総額は示していません。
★★アメリカン・タワーは不動産の売上高106億95百万〜108億45百万ドル、当期純利益32億70百万〜33億50百万ドルと金額で示しています。★米国3社の中でこの会社だけです。
よくある質問
三井不動産のアメリカ版はどこですか?
★★★正面から重なる会社はありません。三井不動産は開発から賃貸・分譲・マネジメント・施設営業までを手がける総合デベロッパーで、米国の3社はいずれも1つの資産に絞って貸すREITだからです。★★とくに分譲(外部売上の26.9%)に当たる事業を米国3社は持っていません。★★商業施設の賃貸ではサイモン・プロパティー・グループ、物流施設ではプロロジスが近い形です。★規模はサイモン・プロパティー・グループ(約1兆120億円)が三井不動産(2兆7,097億円)の0.37倍、プロロジス(約1兆3,977億円)が0.52倍、アメリカン・タワー(約1兆6,926億円)が0.62倍で、いずれも日本側のほうが大きい形です。
三菱地所に対応する米国企業はどこですか?
★★★正面から重なる会社はありません。三菱地所は6部門を持つ総合デベロッパーで、米国3社はいずれも1つの資産に絞ったREITです。★★コマーシャル不動産事業が商業施設と物流施設を含むため、サイモン・プロパティー・グループとプロロジスの両方と部分的に重なります。★★規模ではアメリカン・タワー(約1兆6,926億円)が三菱地所(1兆7,461億円)の0.97倍で、日米5社で最も近い組み合わせです。★★★ただしアメリカン・タワーは通信塔とデータセンターを貸す会社で、オフィスや住宅の開発は行っていません。
なぜ◎(正面から重なる)が1件も無いのですか?
★★★日本の2社と米国の3社で、事業の形が根本から違うためです。★日本の2社は「開発して、貸して、売って、管理する」総合デベロッパーで、三井不動産は5部門、三菱地所は6部門を持ちます。★★米国の3社はいずれも1つの資産に絞って貸すREITです(プロロジス=物流施設、サイモン・プロパティー・グループ=モール、アメリカン・タワー=通信塔とデータセンター)。★★★分譲(物件の販売)に当たる事業を米国3社は持っていません。三井不動産の分譲は外部売上の26.9%、三菱地所の住宅事業は25.8%を占めます。★当サイトが載せている22業界で、◎が1件も無いのはこの業界だけです。★★◎が無いことを、当サイトは隠さずそのまま書いています。
なぜ米国3社の部門の利益率が70%を超えるのですか?
★★★減価償却費を引く前の金額だからです。★プロロジスの表の見出しは「Reportable Segment Net Operating Income」で、部門の利益は一般管理費と減価償却費を差し引く前の金額です。2部門の合計65億9百万ドルから一般管理費4億69百万ドルと減価償却費26億26百万ドルを引き、売却益を足すと連結の営業利益43億57百万ドルになります。★アメリカン・タワーも同じ形で、6部門の合計73億65百万ドルから株式報酬費用・本社の販売管理費・減価償却費・その他の費用を引くと、継続事業の税引前利益30億44百万ドルになります。★★★日本の2社の部門の利益率とそのまま比べることはできません。★当サイトは各社の定義をそのまま書いています。
サイモン・プロパティー・グループの当期純利益が倍近くになったのはなぜですか?
★★★TRG(タウブマン・リアルティ・グループ)の支配獲得に伴う非現金の評価益28億58百万ドルを計上したためです。★会社は「2025年10月31日に、それまで保有していなかったTRGの残り12%の持分を、オペレーティング・パートナーシップの約506万口と引き換えに取得した。この取得によりTRGの支配を獲得し、同日から連結している」と記載しています。★★会計上は企業結合として扱われ、それまで持っていた88%の持分を公正価値で評価し直したことにより、2025年10〜12月期に28億58百万ドルの非現金の利益を認識したとしています。★普通株主に帰属する当期純利益は46億24百万ドル(前期23億67百万ドル)、1株当たり利益は14.17ドル(7.26ドル)です。★★★当サイトはこの評価益を除いた利益を作りません。会社が公表した数値をそのまま載せています。
日本の2社が同じ四半期に正反対の動きをしているのはなぜですか?
★★2026年4〜6月期は、三井不動産が売上高23.1%減・純利益39.0%減、三菱地所が営業収益39.4%増・純利益198.3%増でした。★★★当サイトは理由を書きません。どちらの会社も要因を数値で示していないためです。★★通期の予想はどちらも増収増益で、三井不動産は売上高3.3%増・当期純利益2.3%増、三菱地所は営業収益14.5%増・当期純利益5.6%増としています。★三井不動産の前年同期(2025年4〜6月期)は売上高が27.3%増・営業利益が58.1%増と大きく伸びた期でした。★★不動産の売上には物件の売却が含まれるため、四半期ごとの振れが大きくなります。三井不動産の分譲部門の事業利益1,931億82百万円のうち517億54百万円は固定資産売却損益です(通期の数値)。
プロロジスの配当のところに注記があるのはなぜですか?
★★★SECのXBRLの「宣言した1株当たり配当金」が実態と合わないためです。★`CommonStockDividendsPerShareDeclared` はこの会社では0〜0.03ドルという小さな値になっています。★同じ10-Kの `CommonStockDividendsPerShareCashPaid`(支払った1株当たり配当金)は2.52〜4.04ドルで、こちらが実際の配当です。★★当サイトの取り込みは宣言額を先に見るため、そのままだと1株当たり配当金がほぼゼロで出てしまいます。会社が10-Kに載せた支払額で上書きしました。★★★金額は書き換えていません。会社の公表値をそのまま使っています。
5社の決算期はそろっていますか?
★日本2社は3月末、米国3社は12月末です。★★ただし直近の四半期はどれも2026年4〜6月期なので、同じ3か月で比べられます。★日本2社は2027年3月期の第1四半期、米国3社は2026年12月期の第2四半期という呼び方の違いがあります。★★通期の数値は、日本2社が2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)、米国3社が2025年12月期(2025年1月〜12月)で、3か月ずれています。
数値はいつ時点のものですか?
日本2社の5期の推移・部門別・地域別・経営計画は2026年3月期の有価証券報告書(いずれも2026年6月24日提出)、直近の決算と通期の予想は2026年8月7日公表の第1四半期決算短信によります。米国3社の5期の推移は米国SECに提出されたXBRLデータ、部門別は2025年12月期のForm 10-K(2026年2月13日〜25日提出)、直近の四半期と見通しは2026年7月16日〜8月10日公表の決算発表資料によります。株価と時価総額はページ上部に記載した基準日の値、円換算のレートはページ下部に記載した記事作成時のものです。
数値の基準日
- 売上高(米国企業)
- 各社の直近の通年決算(FY2025)。出典は米国SEC(証券取引委員会)に提出された年次報告書(10-K)
- 売上高(日本企業)
- 各社の直近の通年決算(2026年3月期)。出典は金融庁EDINETに提出された有価証券報告書
- 株価・時価総額
- 2026-08-22 時点
- 為替
- 1米ドル = 158.86円(2026-08-22 時点)
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数値は基準日時点のものです。最新の情報は各社の開示資料をご確認ください。