電力・ガスの米国株 — 日本企業から見る対応表

部門の利益の定義が6社ともばらばらです。東京電力ホールディングスは経常利益ベース、関西電力は経常利益から受取配当金を除いたもの、大阪ガスは営業利益+持分法による投資利益。米国3社はいずれも営業利益ではなく税引後の利益で部門を分けています。同じ「部門の利益」という言葉でも、中身が6通りあります。

通期の見通しの出し方も3通りです。関西電力と大阪ガスは金額で示し、デューク・エナジーとネクステラ・エナジーは調整後(非GAAP)の1株当たり利益だけ、東京電力ホールディングスは「未定」、サザンはSECへの提出書類に載せていません。

このページでは、部門の分け方・利益の定義・見通しの出し方・財務の強さという4つの軸で並べています。

この業界の日本の顔ぶれ

東京電力ホールディングス

エナジーパートナー(電気の小売・外部売上の76.4%)・パワーグリッド(送配電19.4%)・ホールディングス・リニューアブルパワー・フュエル&パワーの5部門。部門の利益は経常利益ベース。2026年3月期は災害特別損失9,138億93百万円で当期純損失4,542億63百万円。通期の業績予想は「未定」。5期とも無配。

売上の内訳(2026年3月期)
区分構成比
エナジーパートナー76.4%
パワーグリッド19.4%
ホールディングス3.4%
リニューアブルパワー0.8%
フュエル&パワー0.1%

有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上高を取得しています。構成比は連結の売上高に占める割合です。

くわしく東京電力ホールディングスの決算と総合特別事業計画

アメリカではデューク・エナジーサザンネクステラ・エナジー

関西電力

エネルギー事業(外部売上の80.4%)・送配電事業・情報通信事業・生活ビジネスソリューション事業の4部門。部門の利益は経常利益から受取配当金を除いたもの。自己資本比率は19.2%から35.1%へ5期で15.9ポイント上昇。2026年4月から報告セグメントを4区分に変更している。

売上の内訳(2026年3月期)
区分構成比
エネルギー事業80.4%
送配電事業9.5%
情報通信事業5.5%
生活・ビジネスソリューション事業4.6%

有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上高を取得しています。構成比は連結の売上高に占める割合です。

くわしく関西電力の決算と経営計画

アメリカではデューク・エナジーサザンネクステラ・エナジー

大阪ガス

国内エネルギー(外部売上の80.7%)・ライフ&ビジネス ソリューション・海外エネルギーの3部門。部門の利益は営業利益+持分法による投資利益。海外エネルギーは外部売上6.3%なのに部門の利益では最大。自己資本比率54.4%は日米6社で最も高い。

売上の内訳(2026年3月期)
区分構成比
国内エネルギー80.8%
ライフ&ビジネス ソリューション13.0%
海外エネルギー6.3%

有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上高を取得しています。構成比は連結の売上高に占める割合です。

くわしく大阪ガスの決算と中期経営計画

アメリカではサザンデューク・エナジーネクステラ・エナジー

アメリカの対応企業

デューク・エナジーDUK

Duke Energy Corporation

電力(外部売上の90.9%)と都市ガス(9.0%)の2部門+その他。部門の利益は「セグメント利益」で、継続事業の利益から非支配持分と優先株式配当を除いたもの。売上高32.2十億ドル。設備投資140億2百万ドルは売上高の43.4%。5期続けて増配。通期の見通しはGAAPの金額が無い。

  • 売上高5.1兆円FY2025 · 米国基準
  • 掲載企業内シェア36.1%
  • 時価総額14.8兆円
対応する日本企業
  • 関西電力
  • 東京電力ホールディングス
  • 大阪ガス

サザンSO

The Southern Company

電力事業(外部売上の80.5%)とサザン・カンパニー・ガス(17.1%)+その他。部門の利益は「セグメント当期純利益」。売上高29.6十億ドル。営業利益は5期続けて増え、5期で97.0%増。株主資本比率23.1%は米国3社で最も低い。通期の見通しの金額はSECへの提出書類に無い。

  • 売上高4.7兆円FY2025 · 米国基準
  • 掲載企業内シェア33.1%
  • 時価総額15.9兆円
対応する日本企業
  • 大阪ガス
  • 関西電力
  • 東京電力ホールディングス

ネクステラ・エナジーNEE

NextEra Energy, Inc.

FPL(フロリダの電力会社・外部売上の66.6%)とNEER(長期契約の発電・蓄電32.0%)の2事業+コーポレート。部門の利益は当期純利益。売上高27.4十億ドル。NEERの設備投資156億69百万ドルはFPLの89億35百万ドルを上回る。2026年5月にドミニオン・エナジーとの統合を提案している。

  • 売上高4.4兆円FY2025 · 米国基準
  • 掲載企業内シェア30.7%
  • 時価総額27.7兆円
対応する日本企業
  • 関西電力
  • 東京電力ホールディングス
  • 大阪ガス

カードの下にある「対応する日本企業」は、その米国企業と事業が重なる会社です。日米それぞれの開示資料(年次報告書・有価証券報告書)でセグメントを突き合わせ、重なりを確認できたものだけを載せています。どこがどう重なるかは下の「日米の構造の違い」で説明しています。

規模の比較

日米の掲載企業の売上高の比較(円換算)東京電力ホールディングス2026年3月期 · 日本基準6.3兆円デューク・エナジーFY2025 · 米国基準5.1兆円サザンFY2025 · 米国基準4.7兆円ネクステラ・エナジーFY2025 · 米国基準4.4兆円関西電力2026年3月期 · 日本基準4.1兆円大阪ガス2026年3月期 · 日本基準2.0兆円

日本企業(オレンジ)と米国企業(青)を同じ物差しで並べています。米ドルは基準日のレートで円換算しました。会計基準が異なるため、売上高の範囲は完全には一致しません(各社の基準を併記しています)。上のカードの「掲載企業内シェア」は、掲載した米国企業3社の売上高合計に占める割合です。世界市場でのシェアではありません。

日米の構造の違い

部門の利益の定義が6社ともばらばら

★★★同じ「部門の利益」でも、中身が6通りあります。

★★★米国3社はいずれも営業利益で部門を分けていません。支払利息と法人税を引いた後の利益なので、持株会社の借入金の利息が「その他」に集まり、3社とも「その他」が大きな損失になります(デューク・エナジー△9億85百万ドル、ネクステラ・エナジー△11億52百万ドル、サザン△10億91百万ドル)。

★★日本3社は経常利益をもとにしていますが、除いているものが違います。関西電力だけが受取配当金を除き、大阪ガスだけが持分法による投資利益を足しています。

当サイトは各社の定義をそのまま書き、呼び名も会社のものを使っています。

部門の分け方は「主力+1つ」でそろっている

★★6社とも主力の事業が売上の66%〜91%を占め、残りを1〜3つの部門に分けています。

(いずれも当サイトの計算)

★★★東京電力ホールディングスだけは部門の分け方の意味が違います。同社の5部門は事業の種類ではなく2016年の分社化でできた基幹事業会社に対応しており、エナジーパートナー(小売)とパワーグリッド(送配電)が別々の部門になっています。他の5社は小売と送配電を1つの部門に含めています。

★★大阪ガスの海外エネルギーは、売上では3部門で最小(6.3%)なのに部門の利益では最大(883億97百万円)です。

通期の見通しの出し方が4通りある

★★★同じ業界の6社で、通期の見通しの出し方が4通りに分かれます。

★★デューク・エナジーは「Management does not forecast reported GAAP EPS and related long-term growth rates.」と明記しています。会社が意図してGAAPの見通しを出していないということです。

★★★東京電力ホールディングスは「現時点においては中東情勢等の影響を受け、燃料価格等の見通しが不透明であり、具体的な業績予想をお示しできる状況になく」と記載しています。当サイトが載せている日本企業で、通期の予想を金額で出していないのはこの会社だけです。

サザンは「earnings guidance」を決算説明資料(スライド)に置いており、SECへ提出された8-Kの添付資料にも10-Kにも金額がありません。当サイトの環境からはその資料を取得できませんでした。

財務の強さが6社で大きく違う

★★★自己資本比率(株主資本比率)は21.8%から54.4%まで開いています。

★★大阪ガスだけが飛び抜けて高い形です。同社は中期経営計画2026で「連結自己資本比率45%以上」を目標に掲げており、すでに上回っています。

★★関西電力は5期で15.9ポイント上がりました(19.2%→35.1%。当サイトの計算)。同社は経営計画2026で「30%台半ば」を目標にしています。

★★★東京電力ホールディングスは前期の25.1%から3.3ポイント下がりました。当期純損失4,542億63百万円を計上したためです。

規模の差

★★米国3社の売上高は、円に換算すると日本3社と同じ桁です。

★★★当サイトが載せている業界で、日本企業が売上高の首位に立つのは電力・ガスだけです。東京電力ホールディングスの6兆3,285億円は、最大のデューク・エナジー(約5兆1,261億円)を上回ります。

★★ただし利益は正反対です。東京電力ホールディングスは当期純損失4,542億63百万円、デューク・エナジーは当期純利益49億68百万ドル(約7,899億円)です。

米ドルはページ下部に記載の基準日のレートで円換算しています。

よくある質問

東京電力ホールディングスのアメリカ版はどこですか?

★★デューク・エナジーとサザンが近いです。どちらも電力と都市ガスの両方を持つ大手で、東京電力ホールディングスも電気事業とガス供給事業(エナジーパートナーの中)を持っています。★★★ただし財務の形が大きく違います。東京電力ホールディングスは福島第一原子力発電所の賠償・廃炉を抱え、2026年3月期は災害特別損失9,138億93百万円で当期純損失4,542億63百万円、5期とも無配です。デューク・エナジーとサザンは5期続けて増配しています。★規模はサザン(約4兆6,997億円)が東京電力ホールディングス(6兆3,285億円)の0.74倍で、日米6社で唯一、日本側のほうが大きい組み合わせです。

関西電力に対応する米国企業はどこですか?

デューク・エナジーです。★★電気と都市ガスの両方を持つ総合エネルギー会社どうしで、どちらも規制対象の電力事業が売上の8割前後を占め、非電力の事業を部門として分けています。★規模はデューク・エナジー(約5兆1,261億円)が関西電力(4兆566億円)の約1.3倍で、日米6社で最も近い組み合わせです。★★原子力と再生可能エネルギーの両方を持つ点ではネクステラ・エナジーも近く、規模も約1.1倍です。★★ただし部門の利益の作り方はどの組み合わせでも違います。

大阪ガスに対応する米国企業はどこですか?

サザンです。★★都市ガスを主力とする事業を持つ会社どうしで、サザン・カンパニー・ガスは4州で約440万件に天然ガスを配給しています。★★★ただしサザン全体では電力事業が80.5%で、都市ガスは17.1%にとどまります。大阪ガスの国内エネルギーは80.7%です。★規模はサザン(約4兆6,997億円)が大阪ガス(2兆303億円)の約2.3倍です。★★大阪ガスは自己資本比率54.4%で日米6社で最も高く、サザンは23.1%で最も低い部類です。

なぜ米国3社の個票に「今期の見通し」の節がないのですか?

★★★3社ともGAAPの金額の見通しを公表していないためです。デューク・エナジーは2026年の調整後(非GAAP)EPS 6.55〜6.80ドル、ネクステラ・エナジーは3.92〜4.02ドルを示していますが、いずれも調整後の指標です。★★デューク・エナジーは「Management does not forecast reported GAAP EPS and related long-term growth rates.」と明記しています。★★サザンはSECへ提出した資料に金額の見通しがなく、会社は「earnings guidance」を決算説明資料(スライド)に置いています。当サイトの環境からはその資料を取得できませんでした。★★★当サイトが通期の数値を作ることはしません。

東京電力ホールディングスの通期予想が「未定」なのはなぜですか?

★★会社が「現時点においては中東情勢等の影響を受け、燃料価格等の見通しが不透明であり、具体的な業績予想をお示しできる状況になく、売上高・営業損益・経常損益・親会社株主に帰属する当期純損益ともに未定としております。今後、業績見通しがお示しできる状況となった段階で、速やかにお知らせいたします」と記載しているためです。★★★当サイトが載せている日本企業で、通期の予想を金額で出していないのはこの会社だけです。★そのため同社の個票には「今期の見通し」の節がありません。関西電力と大阪ガスは売上高・営業利益・経常利益・当期純利益をすべて金額で示しています。

東京電力ホールディングスの時価総額はどう計算していますか?

★★★普通株式16億701万7,531株だけで計算しています。有価証券報告書の「株式の総数等」には、普通株式のほかにA種優先株式16億株・B種優先株式3億4,000万株が載っており、合計は35億4,701万7,531株です。★★A種・B種優先株式は2012年7月に発行されたもので、決算短信は普通株式と別の表で配当を示しています(2026年3月期・2027年3月期の予想ともに0円)。★★★普通株式の株価に、普通株式でない株式を掛けることはしません。この直しを入れる前は2.2倍の時価総額が出ていました。

6社とも部門の利益の意味が違うのですか?

★★★はい。6社で6通りです。東京電力ホールディングスは「経常利益ベース」、関西電力は「経常利益から連結子会社および持分法適用会社からの受取配当金を除いた利益」、大阪ガスは「営業利益に持分法による投資損益を加減した金額」。★★米国3社はいずれも営業利益ではなく税引後の利益で、デューク・エナジーは「継続事業の利益から非支配持分と優先株式の配当を除いたもの」、ネクステラ・エナジーとサザンは当期純利益です。★★そのため米国3社は「その他」の部門が大きな損失になります(持株会社の借入金の支払利息がここに集まるため)。★当サイトは各社の定義をそのまま書いています。部門の利益率を6社で並べることはしていません。

6社の決算期はそろっていますか?

日本3社は3月末、米国3社は12月末です。★★ただし直近の四半期はどれも2026年4〜6月期なので、同じ3か月で比べられます。★日本3社は2027年3月期の第1四半期、米国3社は2026年12月期の第2四半期という呼び方の違いがあります。★★通期の数値は、日本3社が2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)、米国3社が2025年12月期(2025年1月〜12月)で、3か月ずれています。

数値はいつ時点のものですか?

日本3社の5期の推移・部門別・地域別・経営計画は2026年3月期の有価証券報告書(2026年6月22日〜24日提出)、直近の決算と通期の予想は2026年7月29日〜31日公表の第1四半期決算短信によります。米国3社の5期の推移は米国SECに提出されたXBRLデータ、部門別は2025年12月期のForm 10-K(2026年2月13日〜26日提出)、直近の四半期と見通しは2026年7月24日〜8月4日公表の決算発表資料によります。株価と時価総額はページ上部に記載した基準日の値、円換算のレートはページ下部に記載した記事作成時のものです。

数値の基準日

売上高(米国企業)
各社の直近の通年決算(FY2025)。出典は米国SEC(証券取引委員会)に提出された年次報告書(10-K)
売上高(日本企業)
各社の直近の通年決算(2026年3月期)。出典は金融庁EDINETに提出された有価証券報告書
株価・時価総額
2026-08-22 時点
為替
1米ドル = 158.86円(2026-08-22 時点)

投資判断は自己責任で行ってください。

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数値は基準日時点のものです。最新の情報は各社の開示資料をご確認ください。