重工・防衛の米国株 — 日本企業から見る対応表
日本の「重工」と米国の「defense」は、同じ言葉で括りにくい会社です。
三菱重工業の報告セグメントには火力発電システムと原子力発電システムが入り、川崎重工業には二輪車とジェットスキーが入っています。防衛・航空宇宙は、複数ある事業の1つです。
一方、ノースロップ・グラマンは10-Kで、主要な顧客を米国の国防機関と情報機関と説明しています。売上の87.4%が米国向けです。
この業界の日本の顔ぶれ
三菱重工業
エナジー、プラント・インフラ、物流・冷熱・ドライブシステム、航空・防衛・宇宙の4セグメント。発電システムから民間航空機、艦艇、カーエアコンまで扱う。
売上の内訳(2026年3月期)
| 区分 | 構成比 |
|---|---|
| エナジー | 42.0% |
| 航空・防衛・宇宙 | 28.5% |
| プラント・インフラ | 16.7% |
| 物流・冷熱・ドライブシステム | 12.8% |
有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上高を取得しています。構成比は内訳の合計に占める割合で、会社が開示する区分をそのまま用いています。「その他」に当たる区分は含まれないため、合計は売上高と一致しないことがあります。
川崎重工業
航空宇宙システム、車両(鉄道車両)、エネルギーソリューション&マリン、精密機械・ロボット、パワースポーツ&エンジン、その他の6セグメント。二輪車とジェットスキーもこの会社の事業。
売上の内訳(2026年3月期)
| 区分 | 構成比 |
|---|---|
| パワースポーツ&エンジン | 30.7% |
| 航空宇宙システム | 27.6% |
| エネルギーソリューション&マリン | 19.5% |
| 精密機械・ロボット | 11.6% |
| 車両 | 10.6% |
有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上高を取得しています。構成比は内訳の合計に占める割合で、会社が開示する区分をそのまま用いています。「その他」に当たる区分は含まれないため、合計は売上高と一致しないことがあります。
IHI
資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械、航空・宇宙・防衛の4セグメント。陸用・舶用の原動機と航空エンジンを手がける。
アメリカの対応企業
| 企業 | ティッカー | 事業 | 売上高 | 掲載企業内シェア | 時価総額 | 対応の濃さ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| RTXRTX Corp | RTX | プラット&ホイットニー37.2%、レイセオン31.6%、コリンズエアロスペース31.2%の3セグメントがほぼ均等。商用と軍・政府の両方を顧客とし、米国向けは53.4%。 | 14.1兆円FY2025 · 米国基準 | 43.1% | 47.9兆円 | 三菱重工業 ○ 川崎重工業 ○ IHI ○ |
| ロッキード・マーティンLockheed Martin Corp | LMT | 航空40.3%、回転翼&ミッションシステム23.1%、ミサイル&火器管制19.3%、宇宙17.4%の4事業。米国向けが71.6%。 | 12.0兆円FY2025 · 米国基準 | 36.5% | 22.4兆円 | 三菱重工業 ○ 川崎重工業 △ IHI △ |
| ノースロップ・グラマンNorthrop Grumman Corp /DE/ | NOC | 10-Kで主要な顧客を米国の国防機関と情報機関と説明する。事業別の内訳は開示しておらず、地域別で米国が87.4%。売上高は41.2十億ドルで米国3社のなかで最小。 | 6.7兆円FY2025 · 米国基準 | 20.4% | 13.3兆円 | 三菱重工業 ○ 川崎重工業 △ IHI △ |
対応の濃さ:◎ 直接競合(世界市場で同じ製品・顧客を取り合う)/○ 同業(業界は同じだが事業構成が異なる)/△ 部分対応(一部の事業のみ重なる)
規模の比較
日本企業(オレンジ)と米国企業(青)を同じ物差しで並べています。米ドルは基準日のレートで円換算しました。会計基準が異なるため、売上高の範囲は完全には一致しません(各社の基準を併記しています)。上の表のシェアは、掲載した米国企業3社の売上高合計に占める割合です。世界市場でのシェアではありません。
日米の構造の違い
日本側は「重工」、米国側は「防衛」
同じページに並べていますが、事業の重心が違います。
日本側3社の報告セグメントを並べると、防衛・航空宇宙は複数ある事業の1つです。
- 三菱重工業 — エナジー(火力・原子力・風力発電、航空機用エンジン)、プラント・インフラ(製鉄機械、商船、交通システム)、物流・冷熱・ドライブシステム(冷熱製品、ターボチャージャ、カーエアコン)、航空・防衛・宇宙
- 川崎重工業 — 航空宇宙システム、車両(鉄道車両)、エネルギーソリューション&マリン、精密機械・ロボット、パワースポーツ&エンジン、その他
- IHI — 資源・エネルギー・環境(原動機、原子力)、社会基盤、産業システム・汎用機械、航空・宇宙・防衛
米国側3社は、いずれも自社を「aerospace and defense(航空宇宙と防衛)」の会社と説明しています。発電設備や鉄道車両にあたる事業はありません。
川崎重工業は二輪車を作っている
川崎重工業の報告セグメントの1つ「パワースポーツ&エンジン」は、有価証券報告書に二輪車、オフロード四輪車(SxS・ATV)、パーソナルウォータークラフト「ジェットスキー」、汎用ガソリンエンジンの製造・販売と書かれています。
米国3社に、これに当たる事業はありません。日本の重工メーカーが持つ事業の幅を示す例です。
米国向けの比率に差がある
米国3社は、地域別の内訳から米国への集中度が読み取れます。
- ノースロップ・グラマン — 米国87.4%
- ロッキード・マーティン — 米国71.6%
- RTX — 米国53.4%
RTXの比率が低いのは、商用の航空機エンジン(プラット&ホイットニー)と機体システム(コリンズエアロスペース)を持つためです。10-Kには「commercial, military, and government customers(商用・軍・政府の顧客)」と書かれています。
ノースロップ・グラマンは10-Kで、主に米国の国防機関と情報機関に納めると説明しています。
◎が1件もない理由
この業界にも◎(直接競合)は1件もありません。日本側が総合重工で、米国側が航空宇宙・防衛に集中しているため、事業の重心が揃わないからです。
小売のページも◎が0件ですが、理由は違います。小売は業態(何をどう売るか)が細かく分かれるためで、重工は事業の範囲そのものが違うためです。
対応の濃さが業界によって偏ることは、判定の甘さではなく業界の性質です。
事業別の内訳を開示しない会社がある
米国3社のうち、事業別の売上構成を開示しているのはRTXとロッキード・マーティンです。ノースロップ・グラマンはXBRLに事業別の次元がなく、地域別のみでした。
日本側3社の構成比は、上の日本企業のカードの「売上の内訳」から確認できます。有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上高を取得したものです。ただしIHIは個別セグメントの数値が開示資料から取れず、内訳を出していません。
よくある質問
三菱重工業のアメリカ版はどこですか?
事業の重なりがもっとも広いのはRTXです。双方とも航空機用エンジンと防衛の事業を持ちます。ただし三菱重工業は火力・原子力・風力の発電システムを持ち、RTXは商用の航空機システムが大きいため、事業の重心は違います。
なぜ◎(直接競合)が1件もないのですか?
日本側3社が総合重工で、防衛・航空宇宙が複数ある事業の1つにとどまるためです。米国側3社は自社を「航空宇宙と防衛の会社」と説明しており、発電設備や鉄道車両にあたる事業を持ちません。事業の重心が揃わないため、◎を付けていません。
川崎重工業とカワサキのバイクは同じ会社ですか?
有価証券報告書の報告セグメント「パワースポーツ&エンジン」に、二輪車、オフロード四輪車、パーソナルウォータークラフト「ジェットスキー」、汎用ガソリンエンジンの製造・販売と記載されています。同じ会社グループの事業です。
各社の防衛事業だけの売上は分かりますか?
防衛だけを取り出した金額は分かりません。日本側では三菱重工業の「航空・防衛・宇宙」、川崎重工業の「航空宇宙システム」の構成比を日本企業のカードで示していますが、いずれも民間向けを含む区分です。米国側では、ノースロップ・グラマンが事業別の内訳を開示していません。開示されていないものを推測で補うことはしません。
RTXは防衛の会社ではないのですか?
10-Kには「an aerospace and defense company」と書かれており、防衛は主要な事業の1つです。同時に「commercial, military, and government customers」に向けて事業を行うとも書かれています。3つの報告セグメントの構成比はほぼ均等で、米国向けの比率は53.4%と、米国3社のなかでもっとも低くなっています。
数値はいつ時点のものですか?
決算数値は各社の直近の年次報告書(米国は10-K、日本は有価証券報告書)によります。米国3社は12月期、日本3社は3月期です。株価と時価総額はページ上部に記載した基準日の値です。
数値の基準日
- 売上高(米国企業)
- 各社の直近の通年決算(FY2025)。出典は米国SEC(証券取引委員会)に提出された年次報告書(10-K)
- 売上高(日本企業)
- 各社の直近の通年決算(2026年3月期)。出典は金融庁EDINETに提出された有価証券報告書
- 株価・時価総額
- 2026-08-15 時点
- 為替
- 1米ドル = 159.31円(2026-08-15 時点)
投資判断は自己責任で行ってください。
当サイトは特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
数値は基準日時点のものです。最新の情報は各社の開示資料をご確認ください。