医薬品Pharmaceuticals
日本の顔ぶれ
- 武田薬品工業医薬品事業の単一セグメント。消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス、オンコロジーを重点領域とし、血漿分画製剤とワクチンにも注力する。連結子会社等を含めて165社。アメリカではファイザーアッヴィアムジェンメルクイーライリリージョンソン・エンド・ジョンソンギリアド・サイエンシズバーテックス・ファーマシューティカルズ
- 第一三共医薬品事業の単一セグメント。国内に一般用医薬品(第一三共ヘルスケア)とワクチン(第一三共バイオテック)の子会社を持つ。海外38社のうち米国に第一三共Inc.とアメリカン・リージェント。アメリカではファイザーメルクイーライリリージョンソン・エンド・ジョンソンアッヴィアムジェンギリアド・サイエンシズバーテックス・ファーマシューティカルズ
- アステラス製薬医薬品事業の単一セグメント。「区分すべき事業セグメントが存在しない」と記載する。米国に研究開発と販売の子会社を置く。アメリカではイーライリリーアッヴィギリアド・サイエンシズファイザーメルクジョンソン・エンド・ジョンソンバーテックス・ファーマシューティカルズアムジェン
アメリカの対応企業
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJ
Johnson & Johnson
医療用医薬品(64.1%)と医療機器(35.9%)の2部門。8社で唯一、医薬品以外に大きな柱を持つ。部門の利益指標は税引前の部門利益。タルク訴訟の引当金が3期にわたって利益を動かした。売上高94.2十億ドル。
- 売上高15.0兆円
- 純利益4.3兆円
- 時価総額102.7兆円
- 株価271.22USD
- 掲載企業内シェア22.1%
- 決算期FY2025 · 米国基準
- 武田薬品工業
- 第一三共
- アステラス製薬
イーライリリーLLY
Eli Lilly and Company
単一セグメント。10-Kに「ヒト用医薬品」と明記する。1876年にインディアナポリスで創業した事業を継承し、1901年に法人化した。約90か国で販売する。
- 売上高10.3兆円
- 純利益3.3兆円
- 時価総額175.0兆円
- 株価1,183.46USD
- 掲載企業内シェア15.3%
- 決算期FY2025 · 米国基準
- アステラス製薬
- 武田薬品工業
- 第一三共
メルクMRK
Merck & Co., Inc.
医療用医薬品と動物用医薬品の2セグメント。11社で2つ以上の報告セグメントを持つのは、この会社とジョンソン・エンド・ジョンソンだけ。動物用医薬品は売上の9.9%。
- 売上高10.3兆円
- 純利益2.9兆円
- 時価総額57.7兆円
- 株価148.78USD
- 掲載企業内シェア15.2%
- 決算期FY2025 · 米国基準
- 武田薬品工業
- 第一三共
- アステラス製薬
ファイザーPFE
Pfizer Inc.
社内はBiopharma・PC1・Pfizer Igniteの3区分だが、報告するセグメントはBiopharmaのみ。PC1は受託開発製造と特殊原薬の供給。Pfizer Igniteは2025年に中止を決定した。
- 売上高9.9兆円
- 純利益1.2兆円
- 時価総額25.7兆円
- 株価28.67USD
- 掲載企業内シェア14.7%
- 決算期FY2025 · 米国基準
- 武田薬品工業
- 第一三共
- アステラス製薬
アッヴィABBV
AbbVie Inc.
単一セグメント。指標は純利益。ヒュミラが3期で68.5%減り、スキリージとリンヴォックが埋めた。営業利益150.8億ドルに対し純利益は42.3億ドルで、差の主因は条件付対価の評価替え65億ドル。売上高61.2十億ドル。
- 売上高9.7兆円
- 純利益6,708億円
- 時価総額73.4兆円
- 株価264.34USD
- 掲載企業内シェア14.3%
- 決算期FY2025 · 米国基準
- 武田薬品工業
- アステラス製薬
- 第一三共
アムジェンAMGN
Amgen Inc.
単一セグメント。指標は純利益。10億ドルを超える製品が14あり、最大のプロリアでも売上の12.0%。8社で最も1製品に頼らない形。2023年のホライズン買収(約278億ドル)が5期の推移を動かした。売上高36.8十億ドル。
- 売上高5.8兆円
- 純利益1.2兆円
- 時価総額35.2兆円
- 株価414.61USD
- 掲載企業内シェア8.6%
- 決算期FY2025 · 米国基準
- 武田薬品工業
- 第一三共
- アステラス製薬
ギリアド・サイエンシズGILD
Gilead Sciences, Inc.
単一セグメント。指標はギリアドに帰属する純利益。HIV治療薬が70.5%、ビクタルビ1製品で48.7%。直近の四半期は3件の買収を資産取得として処理し、104.96億ドルの純損失。売上高29.4十億ドル。
- 売上高4.7兆円
- 純利益1.4兆円
- 時価総額29.4兆円
- 株価150.93USD
- 掲載企業内シェア6.9%
- 決算期FY2025 · 米国基準
- アステラス製薬
- 武田薬品工業
- 第一三共
バーテックス・ファーマシューティカルズVRTX
Vertex Pharmaceuticals Incorporated
単一セグメント。指標は純利益。トリカフタ/カフトリオ1製品で85.9%、嚢胞性線維症の2製品で92.9%。研究開発費が売上高の32.6%で8社最高。8社で唯一の無配。売上高12.0十億ドル。
- 売上高1.9兆円
- 純利益6,275億円
- 時価総額20.9兆円
- 株価526.19USD
- 掲載企業内シェア2.8%
- 決算期FY2025 · 米国基準
- 武田薬品工業
- 第一三共
- アステラス製薬
カードの下にある「対応する日本企業」は、その米国企業と事業が重なる会社です。
規模の比較
日本企業(オレンジ)と米国企業(青)を同じ物差しで並べています。
日米の構造の違い
11社のうち9社が「単一セグメント」
日本の3社(武田薬品工業・第一三共・アステラス製薬)は、有価証券報告書に「医薬品事業の単一セグメント」と書いています。米国側でもイーライリリー・アッヴィ・アムジェン・ギリアド・サイエンシズ・バーテックス・ファーマシューティカルズの5社が単一セグメント、ファイザーは社内に3区分を持ちますが報告するのは1つだけです。
2つ以上の報告セグメントを持つのは、メルクとジョンソン・エンド・ジョンソンの2社だけです。
- メルク — 医療用医薬品90.1%・動物用医薬品9.9%
- ジョンソン・エンド・ジョンソン — イノベーティブ・メディスン(医薬品)64.1%・メドテック(医療機器)35.9%
★★そのため、この業界では事業の内訳を見比べても会社の違いが出てきません。違いは別の3か所に現れます。製品の集中度、利益の作り方、そして地域構成です。
1製品への依存度が7倍違う
最大の製品が売上高に占める比率を並べると、この業界の形がはっきり分かれます。
- バーテックス・ファーマシューティカルズ — トリカフタ/カフトリオで85.9%(同じ嚢胞性線維症の2製品で92.9%)
- メルク — キイトルーダで48.7%
- ギリアド・サイエンシズ — ビクタルビで48.7%(HIV治療薬全体で70.5%)
- アステラス製薬 — XTANDIで44.9%
- アッヴィ — スキリージで28.7%(免疫領域全体で49.7%)
- 武田薬品工業 — 消化器系疾患のビジネスエリアで31.2%(うちENTYVIO単独では21.3%)
- ジョンソン・エンド・ジョンソン — ダルザレックスで15.2%
- アムジェン — プロリアで12.0%
★★★最も集中したバーテックス・ファーマシューティカルズと、最も分散したアムジェンで7倍の開きがあります。アムジェンは10億ドルを超える製品を14持ち、疾患領域も骨粗鬆症・高コレステロール・乾癬・関節リウマチ・がん・喘息・痛風・甲状腺眼症と分かれています。
★第一三共・イーライリリー・ファイザーは製品別の内訳を、この粒度では開示していません。イーライリリーは治療領域別で心血管代謝が74.0%、うちマンジャロとゼップバウンドの2製品(いずれも成分はチルゼパチド)で56.0%です。
「営業利益」の行がない会社が半分ある
★★★米国8社のうち4社(ファイザー・メルク・イーライリリー・ジョンソン・エンド・ジョンソン)は、連結の損益計算書に営業利益の行を持ちません。売上高から費用を引いた先を「税引前利益」として示し、その手前に小計を置いていません。
そのため当サイトは、この4社の推移の図を純利益で描いています。残る4社(アッヴィ・アムジェン・ギリアド・サイエンシズ・バーテックス・ファーマシューティカルズ)には営業利益の行があります。
★★日本側3社も、IFRSのため「主要な経営指標等の推移」に営業利益の欄がありません。税引前利益までしか載っていないため、推移の図は税引前利益で描いています。
★★部門の利益の指標も、会社ごとに違います。
- 純利益 — アッヴィ、アムジェン、ギリアド・サイエンシズ、バーテックス・ファーマシューティカルズ(いずれも単一セグメント)
- 税引前の部門利益 — ジョンソン・エンド・ジョンソン
- 営業利益にあたるもの — 日本側3社は単一セグメントのため、部門の利益そのものが存在しない
★単一セグメントの会社が「部門の利益の指標」を開示するようになったのは、米国の会計基準の改正(ASU 2023-07)によるものです。そのためアムジェンやバーテックス・ファーマシューティカルズでは、セグメントの注記に売上から純利益までの費用の内訳がそのまま並びます。
買収の会計処理が、利益を大きく動かす
★★★この業界では、開発中の医薬品を持つ会社を買ったときの会計処理が2通りに分かれ、利益の出方がまったく変わります。
- 企業結合として処理 — 取得価額が無形資産になり、何年もかけて償却される
- 資産取得として処理 — 取得価額のほぼ全額が、その期に一括で費用になる
実際に、直近の3期でどちらも起きています。
- アムジェン — 2023年10月にホライズン・セラピューティクスを約278億ドルで取得。企業結合として処理。2024年12月期は無形資産の償却48億ドル・棚卸資産の評価替えの償却24億ドルが重なり、純利益が67億17百万→40億90百万ドルへ減った
- バーテックス・ファーマシューティカルズ — 2024年にアルパイン・イミューン・サイエンシズを約50億ドルで取得。資産取得として処理し、46億28百万ドルを一括費用に。売上は11.7%増えたのに、同期だけが赤字になった
- ギリアド・サイエンシズ — 2024年にサイマベイを取得し38億ドルを一括費用に。さらに2026年4〜6月期に3件(アーセルクス・トゥブリス・オウロ・メディシンズ)をいずれも資産取得として処理し、同四半期の取得IPR&D費用は111億83百万ドル。売上10.2%増のまま104億96百万ドルの純損失になった
- アッヴィ — 「取得IPR&Dとマイルストーン」を損益計算書の独立の行に持つ。7億78百万→27億57百万→50億16百万ドルと増えている
★★そのため、この業界では「売上は伸びているのに赤字」という期が普通に現れます。ギリアド・サイエンシズは2026年12月期の通期の見通しでも、製品売上301億〜304億ドル(増収)とGAAPの1株当たり損失3.75〜3.40ドルを同時に示しています。
一過性の項目が、利益の見え方を変える
買収の会計処理以外にも、この業界の利益は一過性の項目で動きます。
- ジョンソン・エンド・ジョンソン — タルク訴訟の引当金。2023年12月期は約70億ドルの引当、2024年12月期は約51億ドルの引当、2025年12月期は約70億ドルの戻し入れ。売上高は素直に伸びているのに、純利益だけが351億53百万→140億66百万→268億4百万ドルと振れた
- アッヴィ — 条件付対価負債の公正価値の変動。2025年12月期は65億ドルの費用で、会社はスキリージの将来の売上見込みが上がったことを理由に挙げている。売れるほど費用が膨らむ
- ギリアド・サイエンシズ — トロデルビの非小細胞肺がん(2次治療)の開発中止を受けた減損。2024年12月期に42億ドル
- バーテックス・ファーマシューティカルズ — VX-264の開発中止を受けた減損。2025年12月期に3億79百万ドル
- 武田薬品工業 — 2026年3月期は税引前損失1,424億円・当期損失1,524億円で、5期で唯一の赤字
- アステラス製薬 — 当期利益が170億円→507億円→2,915億円、ROEが1.1%→3.3%→17.4%とV字を描いた
★★当サイトはこれらの良し悪しを述べません。会社が公表した金額と、会社が挙げた理由を並べています。
日本を国名で開示するのは2社だけ
事業別の内訳がない代わりに、各社は地域別の内訳を開示しています。ただし区分の粒度も基準もそろっていません。
- アッヴィ — 12か国を国名で開示。米国76.2%、ドイツ17億38百万ドル、日本12億74百万ドル(2.1%)、カナダ、中国、フランス…。基準は製品の出荷先
- イーライリリー — 米国66.7%、欧州、その他、日本21億32百万ドル(3.3%)、中国。基準は顧客その他の相手方の所在地
- ジョンソン・エンド・ジョンソン — 米国57.1%、欧州、アジア太平洋・アフリカ、西半球(米国を除く)の4区分。日本は独立していない
- ギリアド・サイエンシズ — 米国70.9%、欧州、その他の3区分。「米国以外の個々の国は、いずれも総売上高の10%未満」と注記
- バーテックス・ファーマシューティカルズ — 米国62.9%、欧州28.8%、その他の3区分
- アムジェン — 米国71.9%と米国以外の2区分だけ
- ファイザー — 米国、先進国、新興国の3区分
★★★日本を国名で開示しているのは、アッヴィとイーライリリーの2社だけです。米国企業が日本での売上を単独で示す例は多くありません。
★逆に日本側3社は、日本の売上を必ず開示します。第一三共は日本5,801億円(27.3%)、アステラス製薬は日本3,171億円(14.8%)、武田薬品工業は国内4,331億円(9.6%)です。★★武田薬品工業の海外比率90.4%は、米国8社のどの会社の「本国以外」の比率よりも高いという逆転が起きています。
日本の会社も米国で売っている
通信の業界ページでは、日本の会社が米国の利用者に携帯電話を売ることはない、と書きました。医薬品は逆です。
- 武田薬品工業 — 武田ファーマシューティカルズ U.S.A., Inc.、バクスアルタUS Inc. ほか
- 第一三共 — 第一三共Inc.、アメリカン・リージェントInc.
- アステラス製薬 — アステラス ファーマ US, Inc.(販売)、アステラス ファーマ グローバル ディベロップメント Inc.(研究開発)
3社とも米国に研究開発や販売の子会社を置いています。同じ市場で同じ医師や患者に向けて売っているため、この業界の日米の重なりは全体に大きくなります。
卸への集中が、日本の開示には現れない
★★米国の医薬品は、ごく少数の卸を通して流れます。各社は10-Kで、総売上の10%以上を占める顧客を開示しています。
- アムジェン — 3社で77%(マッケソン34%・センコーラ27%・カーディナルヘルス16%)
- ギリアド・サイエンシズ — 3社で74%(カーディナルヘルス29%・マッケソン24%・センコーラ21%)
- ジョンソン・エンド・ジョンソン — 3社で48.4%(約21.8%・15.5%・11.1%)
- バーテックス・ファーマシューティカルズ — マッケソン22%・アクレド ヘルス グループ12%
- アッヴィ — 「米国の医薬品の純収益のほぼすべてが3社の卸へのもの」と記載(比率の開示なし)
★日本側3社の有価証券報告書には、これに相当する開示がありません。
研究開発費の比率が2倍以上違う
- バーテックス・ファーマシューティカルズ — 39億9百万ドル・売上高の32.6%
- アムジェン — 72億72百万ドル・19.8%
- ギリアド・サイエンシズ — 57億99百万ドル・19.7%
- ジョンソン・エンド・ジョンソン — 146億65百万ドル・15.6%
- アッヴィ — 90億96百万ドル・14.9%(別に取得IPR&Dとマイルストーン50億16百万ドル)
★★金額で最も大きいのはジョンソン・エンド・ジョンソン(146億65百万ドル)ですが、比率では最も低い部類です。同社は医療機器を含むためでもあります。
通期の見通しの示し方が会社ごとに違う
★★★米国の会社は、通期の見通しを10-Kにも四半期報告書にも書きません。いずれもSECに提出する決算発表資料(Form 8-K の添付資料)にだけ載せています。日本の3社が決算短信で示すのとは、資料の位置づけが違います。
しかも、GAAPの金額をどこまで示すかが分かれます。
- アムジェン — 売上高382億〜394億ドル、GAAPの1株当たり利益15.80〜17.08ドル、設備投資約26億ドル、自社株買い30億ドル以内。最も詳しい
- バーテックス・ファーマシューティカルズ — 売上高131億〜132億ドル、GAAPの費用の合計63億〜64億5千万ドル。利益の見通しは無し
- ギリアド・サイエンシズ — 製品売上301億〜304億ドル、GAAPの1株当たり「損失」3.75〜3.40ドル
- ジョンソン・エンド・ジョンソン — 売上高約1,011億ドルだけ。利益は非GAAPのみ
- イーライリリー — 売上高850億〜870億ドル。利益は非GAAPのみ(1株当たり利益35.50〜36.50ドル)
- メルク — 売上高663億〜673億ドル。利益は非GAAPのみ(1株当たり利益2.66〜2.76ドル)
- ファイザー — 売上高605億〜625億ドル。利益は非GAAPのみ(調整後1株当たり利益2.80〜3.00ドル)
- アッヴィ — 決算発表資料にGAAPの金額が1つも無い。調整後(非GAAP)の1株当たり利益13.87〜14.07ドルのみ
★★そのためアッヴィの個票には、見通しの表の行がありません。当サイトは見通しの表を、SECに提出された書類にあるGAAPの数値で作っているためです。
規模の差が大きい
売上高(直近の通期・米ドルはページ下部のレートで円に直したもの)は次のとおりです。
- ジョンソン・エンド・ジョンソン — 94.2十億ドル
- メルク — 65.0十億ドル
- イーライリリー — 65.2十億ドル
- ファイザー — 62.6十億ドル
- アッヴィ — 61.2十億ドル
- 武田薬品工業 — 4兆5,057億円
- アムジェン — 36.8十億ドル
- ギリアド・サイエンシズ — 29.4十億ドル
- アステラス製薬 — 2兆1,392億円
- 第一三共 — 2兆1,230億円
- バーテックス・ファーマシューティカルズ — 12.0十億ドル
最大のジョンソン・エンド・ジョンソンと最小のバーテックス・ファーマシューティカルズで7.8倍の開きがあります。表では円換算・同じレートで並べているので、11社を通して比べられます。
よくある質問
武田薬品工業のアメリカ版はどこですか?
製品の分散のしかたではアムジェンが最も近い形です。武田薬品工業は消化器系疾患31.2%・血漿分画製剤23.5%・希少疾患16.9%・オンコロジー12.9%・ニューロサイエンス9.2%と分かれ、アムジェンも10億ドルを超える製品が14あり最大のプロリアでも12.0%です。★★大型買収を経て負債を抱えた点も共通します(武田薬品工業は2019年のシャイアー、アムジェンは2023年のホライズン)。★扱う疾患領域ではファイザーとも重なります。どちらも幅広い領域を扱い、ワクチンを事業に含みます。
アステラス製薬とイーライリリーは、どこまで似ているのですか?
双方が「単一セグメント」であると開示資料に明記しているためです。アステラスは有価証券報告書に「区分すべき事業セグメントが存在しない」と書き、リリーは10-Kに「単一の事業セグメント — ヒト用医薬品」と書いています。★★製品の集中度も近い形です。アステラス製薬はXTANDI1製品で44.9%、イーライリリーはマンジャロとゼップバウンドの2製品(いずれも成分はチルゼパチド)で56.0%です。★★ただし伸び方が違います。イーライリリーは5期で売上高2.30倍・純利益3.70倍と伸び、アステラス製薬は売上収益がほぼ横ばいで利益がV字を描きました。
1つの製品に売上の8割以上が集中している会社があるのは、なぜですか?
バーテックス・ファーマシューティカルズがそれにあたります。トリカフタ/カフトリオ1製品で85.9%、同じ嚢胞性線維症のアリフトレックを足すと92.9%です。★嚢胞性線維症は、欧米に多く日本ではまれな遺伝性の疾患で、会社は10-Kに「20年以上にわたって嚢胞性線維症の治療薬の発見と開発に取り組んできた」と記載しています。★★同社は分野を広げつつあります。2025年12月期に鎌状赤血球症・βサラセミア(キャスジェビー)と急性疼痛(ジャーナビクス)で売上が立ち、2026年8月には内分泌の希少疾患を「第5の柱」に加えるとしてクリネティクス・ファーマシューティカルズの買収に合意したと公表しています。★★当サイトは集中の良し悪しを述べません。開示された数字を並べています。
売上が伸びているのに赤字になる会社があるのは、なぜですか?
開発中の医薬品を持つ会社を買ったときの会計処理によるものです。★★★「資産取得」として処理すると、取得価額のほぼ全額がその期に一括で費用になります。企業結合として処理すれば無形資産になり、何年もかけて償却されます。★ギリアド・サイエンシズは2026年4〜6月期に3件の買収(アーセルクス・トゥブリス・オウロ・メディシンズ)をいずれも資産取得として処理し、取得IPR&D費用111億83百万ドルを計上しました。売上は10.2%増えたのに、104億96百万ドルの純損失です。★バーテックス・ファーマシューティカルズも2024年にアルパイン・イミューン・サイエンシズの取得で46億28百万ドルを一括費用にし、売上11.7%増のまま同期だけが赤字になりました。★★一方アムジェンは2023年のホライズン買収を企業結合として処理したため、費用が無形資産の償却として数年に分かれ、2024年12月期の減益という形で現れました。
なぜ「営業利益」で比べられない会社があるのですか?
★★★米国8社のうち4社(ファイザー・メルク・イーライリリー・ジョンソン・エンド・ジョンソン)は、連結の損益計算書に営業利益の行を持たないためです。売上高から費用を引いた先を「税引前利益」として示し、その手前に小計を置いていません。そのため当サイトは、この4社の推移の図を純利益で描いています。★日本側3社もIFRSのため「主要な経営指標等の推移」に営業利益の欄がなく、税引前利益までしか載っていません。★★部門の利益の指標もそろっていません。単一セグメントの4社(アッヴィ・アムジェン・ギリアド・サイエンシズ・バーテックス・ファーマシューティカルズ)は純利益、ジョンソン・エンド・ジョンソンは税引前の部門利益です。会社をまたいで利益率を比べるときは、どの利益かを必ず確かめてください。
米国企業の日本での売上は分かりますか?
アッヴィとイーライリリーの2社だけ分かります。アッヴィは12億74百万ドル(売上の2.1%)、イーライリリーは21億32百万ドル(3.3%)を国名で開示しています。★★残る6社は日本を独立した区分にしていません。アムジェンは「米国」と「米国以外」の2区分だけ、ギリアド・サイエンシズは「米国以外の個々の国は、いずれも総売上高の10%未満」と注記しています。★ただし金額以外の記載はあります。アムジェンの10-Kには、オテズラが「米国・日本・オーストラリアではあらゆる重症度の成人の尋常性乾癬に承認」「日本では掌蹠膿疱症の治療にも承認」とあります。ジョンソン・エンド・ジョンソンの10-Kは、リスク要因で「欧州連合・英国・日本・中国を含む多くの主要市場で政府が医療の財源に広く関与している」と触れています。
なぜ、重なりの薄い組み合わせが少ないのですか?
日米11社とも、開示資料の上では「医薬品を研究し、作り、売る」以外の柱をほとんど持たないためです。★持っているのは、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療機器(35.9%)、アッヴィのエステティクスとアイケア(合わせて11.3%)、メルクの動物用医薬品(9.9%)、ファイザーの受託開発製造、第一三共の一般用医薬品(4.3%)くらいです。★★このうちジョンソン・エンド・ジョンソンの医療機器337億92百万ドルだけは、規模が別格です。オリンパス(2026年3月期の売上収益9,832億円)の約5.5倍にあたります。★重なりの大きさが業界によって偏ることは、確認の甘さではなく業界の性質です。通信のページでは、正面から競合する組み合わせが1件もありません。
11社の決算期はそろっていますか?
★そろっていません。日本の3社(武田薬品工業・第一三共・アステラス製薬)はいずれも3月末、米国の8社はいずれも12月末です。★★ただしジョンソン・エンド・ジョンソンだけは52/53週制で、「12月31日にいちばん近い日曜日」に終わります。2025年12月期は2024年12月30日から2025年12月28日までです。★そのため「直近の通期」が指す期間は、日米で9か月ずれます。各社のカードに決算期を書いています。
数値はいつ時点のものですか?
決算数値は各社の直近の年次報告書(米国は10-K、日本は有価証券報告書)と、そのあとに公表された決算発表資料によります。日本の3社は2026年3月期、米国の8社は2025年12月期です。直近の四半期の実績は、米国の8社はいずれも2026年4〜6月期(第2四半期)の四半期報告書によります。株価と時価総額、米ドルの円換算レートはページ下部に記載しています。
注記(2件)
- アメリカの対応企業
- 日米それぞれの開示資料(年次報告書・有価証券報告書)でセグメントを突き合わせ、重なりを確認できたものだけを載せています。どこがどう重なるかは下の「日米の構造の違い」で説明しています。
- 規模の比較
- 米ドルはページ下部のレートで円換算しました。会計基準が異なるため、売上高の範囲は完全には一致しません(各社の基準を併記しています)。上のカードの「掲載企業内シェア」は、掲載した米国企業8社の売上高合計に占める割合です。世界市場でのシェアではありません。
出典
売上高・純利益は各社の直近の通年決算(米国企業 FY2025/日本企業 2026年3月期)によります。出典は米国SEC(証券取引委員会)の年次報告書(10-K)、金融庁EDINETの有価証券報告書、株価はYahoo Finance。金額の円換算は1米ドル = 158.73円、株価と時価総額は1米ドル = 157.06円。
投資判断は自己責任で行ってください。
当サイトは特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
数値は更新時点のものです。最新の情報は各社の開示資料をご確認ください。
更新日